太陽と影を遊びながら学ぼう!動きで感じる日光と影の関係(太陽とかげ:第1時)
(一言で)授業の目標
授業の目標(詳細)
本単元では、日なたと日陰の違いに注目し、観察を通じて日陰の位置と太陽の動き、地面の温かさや湿り気の違いを調べる活動に取り組みます。この活動を通して、自然現象についての理解を深め、観察に必要なスキルを身につけられるようにします。また、共通点や違いを見つけながら、問題を発見し、自分で解決しようとする姿勢を育むことを目指します。
太陽やその光である日光は、理科で学ぶさまざまな自然現象に関わるエネルギーです。小学校3年生らしく遊びを交えた学習を通じて、説明を聞くだけでは得られない生きた知識を身につけられるようにしたいと考えています。
本教材のポイント
この単元のはじめには、太陽の動きや日なたと日陰の地面の違い、さらに光の性質についての学習を深めるため、子どもたちに日光に関わる体験をさせたいと考えています。学習を進める中で「たしかにあのとき、影がこうなっていた」といった経験と結びつけることで、理解がより深まることを期待しています。
影は子どもたちにとって身近な存在ですが、普段はあまり意識されていません。子どもたちは「影の反対側に太陽がある」と答えられるものの、影の位置が自分で変えられると思っていることもあります。また、「太陽は動かず、地球が動いている」と聞いたことがあるため、太陽の見かけ上の動きを理解するのが難しいと感じる子もいます。
そこで、この授業では運動場の指定された範囲で「かげふみ遊び」を通して、影ができる法則性に気付かせることを目指します。この活動で気付いたことや疑問を問題として取り上げ、子どもたちが意欲的に単元内容を学べるように工夫しています。
授業デザイン
・かげで遊んだ経験を話し合う。
T:「かげで遊んだことはありますか。どんな遊びをしたことがありますか。」
C:「かげふみ」「かげつなぎ」「かげおくり」「かげでおもしろい形を作って遊んだ」「部屋を暗くして、影絵をつくった」
T;「かげはおもしろいですね。運動場に出て、かげふみをしましょう。」
・かげで遊んだ経験を問うことで、太陽や光の性質にかかわる経験を共有できるようにする。
*国語の教科書によっては「ちいちゃんのかげおくり」の学習に入る頃である。「かげおくり」は目の錯覚を利用した遊びなので、理科の内容とは直接関係がないが、青空が広がっているときには理科の時間でも経験させておきたい遊びである。
(運動場へ移動し)かげふみのルールを説明する。
【ルール】
① おには10人で、帽子を赤にする。逃げる人は帽子を白にする。(人数は活動時間やクラスの実態によって決める。出席番号などで機械的におにを決め、全員がおにを経験できるようにする)
② 影をふまれたら、枠の外へ出る。一度出たら枠の中へは戻れない。
③ 枠の外へ出てはいけない。
④ 全員がかげをふまれてわくの外へ出たら、おにを交代してまた遊ぶ。
・運動場に作った枠内でかげふみを楽しめるルールを作ることで、かげのでき方に気付くことができるようにする。
*影のでき方に気付きやすいように、設定するルールは最小限にしておく。
*動きやすい服装で活動し、熱中症やけがに配慮する。
*かげふみの様子をタブレット端末などで撮影しておき、後で振り返ることができるようにする。
・かげふみ遊びをする。
T:「おにはたくさん影をふみましょう。逃げる人はふまれないようにがんばってください。」
C:「たくさんつかまえるぞ」「速く走って逃げよう」「踏まれそうになったらジャンプして影をにがした」「絶対ふまれないところがあった」「影をふまれないようにしていてずるい」
・かげふみを通して、影ができる方向が決まっていることに気付くようにする。
*おにを交代しながらかげふみをしているうちに、児童は影がふまれない場所があることに気付く。
おにの児童と言い合いになりそうになったら、その機会をとらえて遊びを一時中断する。
*1回のかげふみが2~3分で終わるようにおにの人数を調整する。全員がおにを経験し、何度も繰り返しているうちにかげができる向きに気付かせることができる。
・気付いたことを共有する。
T:「Aさんが、Bさんが影をふまれないようにしていてずるいと言っています。どういうことでしょうか。ルールを増やしたほうがよさそうでしょうか。」
Aさん:「Bさんがずっと角にいて、影が外に出ているようにしているからずるいです。角は禁止にしたほうがいいです」
T:「かげが絶対にふまれないところがあるのですか」
C:「角にいくと枠から影が出てふまれない」「角だけじゃなくて、あの線(北側のライン)はどこでも影を外に逃がせる」「向こうの角(南側)は、ずるくない」
T:「影の向きは決まっているのですか。違う向きに影ができている人や、影の向きを変える方法はありませんか。試してみましょう」
C:(その場で回ったり、体勢を買えたりして、影の向きが変わらないかたしかめる)「影の向きは変わらない」「太陽と反対にできるから、太陽が動かないと変わらない」「夕方になると違う方向にかげができる」
T:「それでは、『かげが踏めなくなってしまう向こうのラインに立ってはいけない』というルールを付け加えて、もう一度かげふみをやってみましょう」
・影が絶対にふまれない場所について話し合うことを通して、影は同じ方向にできることに気付くことができるようにする。
*ルールを追加してかげふみ遊びを十分楽しませ、教室に戻る。(角は禁止、北の線の上に立つのは10秒までなど)
・(教室へ戻り)かげふみ遊びで気付いたことをノートに書く。
T:「かげふみあそびで自分が気付いたことをノートに書きましょう。」
・気付いたことを一人でまとめる時間をとることで、経験したことを振り返ることができるようにする。
*ノートに絵をかいてよいと声をかけ、図や絵をつかって全員が自由に表現できるようにする。
・かげふみ遊びで気付いたことを話し合う。
T:「かげふみ遊びでどんなことに気付きましたか」
C:「枠の外に影を逃がせる線がある」「みんな影は同じ方向にある」「ジャンプしたら足と影が離れる」「しゃがんだら影が小さくなる」「太陽が雲でかくれたら、影がうすくなった」
・様々な意見を価値付け、日光や影についての共通経験をたくさんつくっておくことで、今後の学習で生かすことができるようにする。
*児童がかげふみをしている様子を撮影した動画を見ながら、出された気付きを全員で共有する。
・本時の学習を振り返り、次時の問題をつくる。
T:「振り返りを書きましょう。かげについて初めて知ったことや感じたこと、疑問に思ったことを書けるといいですね。」
T:「○○さん、○○さん、ふりかえりを発表してください」
C:「どうして同じ方向にかげがあるのかなと思った」「日なたは暑く感じた」
T:「どうしてかげは同じ方向にできるのでしょうか。太陽が関係していると言っている人がいますね。次の時間は影のできる方向は太陽と関係があるのか調べましょう。」
・初めて知ったことや疑問に思ったことを振り返りながら書くよう促すことで、児童の疑問をもとに次時の問題ができるようにする。
・意図的に指名して振り返りを発表させることにより、次時以降の問題を設定する。
作成者からの一言
教室でかげについて問うのと、かげふみをしたその場でかげについて問うのとでは、児童から出てくる気付きの数が全く違います。経験をもとにした話し合いでは、議論が白熱します。
理科では直接経験が何よりも大切と感じ、本教材を投稿しました。
参考文献
東京書籍, 新編新しい理科3, 2024.
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