かげの動きから考察する太陽の動き(太陽とかげ:第4時)
(一言で)授業の目標
授業の目標(詳細)
本単元では、日なたと日陰の様子に着目して、継続的に観察し、それらを比較しながら、日陰の位置と太陽の位置の変化や地面のあたたかさ、湿り気の違いを調べる問題解決活動に取り組む。それらの活動を通してそれらについての理解を図り、観察などに関する技能を身につけることができるようにしていく。主に差異点や共通点を基に、問題を見いだす力や主体的に問題解決しようとする態度を育成する。
太陽やその光である日光は、理科で学習していくあらゆる自然現象にかかわるエネルギーである。小学校3年生らしく遊びを交え、太陽について学習していく中で、説明を聞くだけでは得られない生きた知識を体得できるようにしたい。
【単元の目標】
日なたと日陰の様子に着目して、継続的に観察し、それらを比較しながら、日陰の位置と太陽の位置の変化、地面のあたたかさ、湿り気の違いを調べる活動を通して、それらについての理解を図り、観察などに関する技能を身に付けるとともに、主に差異点や共通点を基に、問題を見いだす力や主体的に問題解決しようとする態度を育成する。
【単元目標を達成するための手立て・工夫】
・太陽とかげの位置関係を調べる
・太陽の位置の変化を調べる
・太陽の光が当たっている地面と当たっていない地面を比較して調べる
【単元計画】添付ファイル参照
本教材のポイント
本時では、かげの変化を記録した結果をもとに、太陽の動きを考察する。
児童たちは時間ごとにかげをなぞり、かげが動いている様子を楽しく観察している。しかし、観察途中で記録用紙がずれたり、観察できなかった時間があったりするので全ての班が正確な記録をしているとは限らない。全ての班の記録を見比べながら、間違った記録を省いてまとめていく必要がある。
記録からかげのうごきはすぐに分かるが、本来調べたかったことは太陽の動きである。かげの向きと長さ、そして方位を関係づけながら結果を考察するのは、3年生にとって難しい思考をともなう。太陽に見立てた懐中電灯を使って記録したかげを再現させることにより、太陽の動きを捉えることができる。班ごとに懐中電灯などを用意して、実際に作ったかげと記録を重ね合わせる活動をするとよい。
まとめでは、家で布団を干したり植物を育てたりするためには家のどこを使うとよいか考えさせる。また日時計も紹介する。学習した知識が生活と結びつくようにしたい。
授業デザイン
・前時の活動を振り返り、めあてを設定する。
【めあて】
かげの動きの記録から、太陽の動きのひみつを解き明かそう。
T:「かげは動きましたね。かげが動いたという結果から何が分かりましたか」
C:「太陽が動いた」
C:「予想が当たった(予想が外れた)」
C:「かげは長さがかわっておもしろかった」
T:「そうですね。かげの動きの記録から、太陽の動きをくわしく調べてみましょう。」
・時間ごとにかげを記録した活動を思い出させ、まず太陽が動いているかどうか結論を問う。他にも長さや向きなど、気になるところがあるという子どもの声から、問題を設定する。
・各班の記録を見比べて、気がついたことを挙げる。
→「かげの向き」、「かげの長さ」
<かげの向き>
T:「班ごとの記録を見てみましょう。かげの向きで気付いたことはありますか。」
C:「ほとんどの班の記録では、かげは西から東へだんだん動いている」
C:「12時ごろに北を向いている」
C:「太陽はかげの反対にあるから、太陽は東から南、そのあと西へ動いたことになる」
<かげの長さ>
T:「かげの長さについて気がついたことはありますか」
C:「朝はかげが長くてだんだん短くなり、昼からまた長くなる」
C:「だいたい12時ごろにかげがいちばん短くなった」
C:「短くなったけどなくなっていないということは、太陽は真上にはきていない」
T:「かげが長いのと短いのとでは、太陽の何がちがうと考えられますか」
C:「太陽の高さが変わる。前の時間に懐中電灯で確かめたよ。」
・記録を書き込んだ方眼紙を黒板に並べて貼り、同じところや違うところを見つけさせる。同じ実験をしたら同じ結果になるはずなのに、違う結果があるのはなぜか考えさせる。また、同じ結果から太陽の動きについて何が言えそうか考えさせる。
*他の班の記録と違う班は、失敗したと感じている。記録が違うからこそ、何があったか考えることが科学的に大切であるということを伝え、確からしい結果だけを考察できるようにする。
(例)
C:「ほとんどの班はかげが西から東に移動しているのに、○班は途中でかげが反対に動いているようになっていておかしい」
T:「この班の人、このときに何があったか覚えていますか」
C:「風で紙がとんで直した。そのときに方位がずれたかもしれない。」
C:「その記録は外して考えないといけない
*かげの向きからは太陽の方位が、かげの長さからは太陽の高さが分かる。
・記録用紙に懐中電灯の光でかげをつくり、太陽の動きを再現する。
T:「朝8時のかげをつくってみましょう。そのときに懐中電灯の太陽はどこにありますか」
C:「東にある」
T:「9時、10時、11時、12時と、だんだんかげが動くように太陽を動かして、12時のところで止めてください」
C:「かげが短くなるように、太陽を高くしないといけない」
C「12時に太陽が真上にこないように、ちょっと南にずらさないといけない」
T:「太陽は東の低いところからだんだん上がって、12時には南の空の高いところへきましたね」
T:「次は午後1時、2時、3時の記録とかさなるように動かしましょう」
C:「今度は西に動かしながら、太陽を下げないといけないよ」
T:「午後4時からの記録はありませんが、太陽はどうなったと考えられますか」
C:「太陽はそのまま西へ降りていって沈み、夜になったと思います」
T:「12時に南の高い空にあった太陽が、西の低い空へ移動しましたね」
・教室を薄暗くして懐中電灯で方眼紙を照らしてストローのかげをつくり、記録したかげの動きを再現して太陽の動きを確かめる。
*太陽の向きと高さを同時に考えるのは児童にとって難しい。記録のかげに沿って懐中電灯でかげを再現させることで、自然に太陽の向きと高さが考えられるようにする。
*一人がライトを動かし、同じ班の児童が高さや向きをアドバイスできるようにする。「もっと高くして」「もう少し東だよ」などと声をかけ合う中で、太陽の動きが理解できるようになる。
*正午までと正午からを区切り、太陽の動きを分けて考えると理解しやすい。
・本時の学習を振り返る。
T:「振り返りを書きましょう。前のノートを見て、自分の予想と結果をくらべるといいですね。新しく知ってうれしかったことを書いてもいいですよ。」
T:「家の人は日光が当たるところでふとんを干していませんか?日光があたるところに植物を置いていませんか?これからは、自分の家のどの方位が日なたになるか分かりますね」
T:「教科書○ページに載っているのは日時計です。みなさんの記録も、日時計になりますよ。」
C:「予想が当たった(はずれた)」「太陽がゆっくり動いていることが分かってびっくりした」「うちのリビングの窓は南むきでずっと日なた。だからふとんを干しているんだな」「日時計を自分で作ってみたい」
・自分の予想と比べてどうだったか、また新しくしったことは何か声をかけて、振り返りの視点がもてるようにする。
・布団干しなどを例に挙げることで、知識を生活に役立てられるようにする。
*GoogleEarthの航空写真を使い、学校のかげがどのように動くか考えさせてもよい。
*最後に指で空に線を描くように動かして太陽の動きを再現し、実感をともなった理解を図る。
作成者からの一言
かげの動きを調べるところまでは、児童は楽しんで取り組める。一番難しいのは、その記録を考察する本時である。教科書やプリントは二次元なので、その解説を読むだけでは太陽の動きを本当に理解できているとは言いがたい。体を動かしながら方位を感覚をつけ、空を指さして動かしながら太陽の動きを理解するとよい。
参考文献
東京書籍, 新編新しい理科3, 2024.
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