日なたと日かげの違いを探る授業ー予想から実験計画の立案までー(太陽とかげ:第5時)
(一言で)授業の目標
授業の目標(詳細)
本単元の第2節では、日なたと日かげの地面を調べることを通して日光が地面の温度に影響を与えていることを学ぶ。第1次で学んだ太陽とかげの関係や太陽とかげの動きの知識を生かしながら、「日なたは暑い」という経験的な知識を実験などで確かめていく。
本時は日なたと日かげの地面の違いに気づき、解決すべき問題を見いだす。天気のよい日を選んで実施し、日なたと日かげの違いを調べると、児童は温かさの違いに注目するだろう。温かさはどうやって調べるのか知り、それは日光に関係しているのかという問題を見いだし、次時の実験につなげていく。
【単元の目標】
日なたと日陰の様子に着目して、継続的に観察し、それらを比較しながら、日陰の位置と太陽の位置の変化、地面のあたたかさ、湿り気の違いを調べる活動を通して、それらについての理解を図り、観察などに関する技能を身に付けるとともに、主に差異点や共通点を基に、問題を見いだす力や主体的に問題解決しようとする態度を育成する。
【単元目標を達成するための手立て・工夫】
・太陽とかげの位置関係を調べる
・太陽の位置の変化を調べる
・太陽の光が当たっている地面と当たっていない地面を比較して調べる
【単元の指導計画】添付ファイル参照
本教材のポイント
本時では、日光が地面の温度に影響しているのではないかという仮説を児童が見いだせるようにする。そのために、授業では以下のような工夫をするとよい。
・天気のよい日に、学校の敷地内の日なたと日かげを観察して比べる中で、児童の様々な気付きを取り上げ、問題をつくる。運動場などずっと日なたになる場所と校舎の北側などずっと日かげになる場所を、児童が行ったり来たりしながら比べられるようにする。
・児童が幅広い気付きを得られるようにする。地面を触ったときの温度だけではなく砂の感触、明るさや風の温度、生えている植物の違いなどである。五感を活用して観察するよう声をかけておくとよい。また、ワークシートを作成し、違いをたくさん見つけようという気持ちが高まるようにしておく。(地面に限定しないことで日常生活や次の学年へのつながりをもたせる)
授業デザイン
・プールサイドや運動会の練習の経験から、日なたと日かげの違いについて考える。
【めあて】
日なたと日かげのちがいを見つけよう。
T:「プールの授業をしたときの写真です。プールサイドを熱そうに歩いていますね。熱かったですか?」
C:「水から上がったとき、足の裏が熱かった」
C:「先生が水をまいてくれないと焼けそうだった」
T:「これは運動会の練習で、座って休憩をしているときの写真です。みんなテントの陰に入っているのはなぜですか。」
C:「日なたは暑くて熱中症になるから」
C:「日光が当たると熱くなるからだと思う」
T:「日光が当たる日なたと、当たらない日かげは何が違うのでしょうか。」
・プールの写真や運動会の練習中の写真を見せ、楽しかった活動を振り返りながら、日なたと日かげの温度に着目できる投げかけをする。
*記録していた写真や動画の中から、プールサイドや地面を熱く感じている様子がわかるものを選んでおく。
*児童の発言の中には、気温に関することも多い。気温の測定は4年生の内容なので深入りはしない。
・屋外で日なたと日かげを比べ、気付いたことを記録する。
T:「日なたと日かげでちがうところをたくさん見つけてワークシートに書きましょう。」
T:「○○さんもう3つも見つけていてすごいですね。もっと増やしてみましょう。みんなもたくさん見つけましょう。たくさん見つけた人は友だちに教えてあげるといいですよ。」
※気付きの例
・日なたの地面は温かく、日かげの地面は冷たい
・日なたの地面はかわいていて、日かげの地面はじめっとしていてぬれているかんじ
・日なたは明るく、日かげは暗い
・日なたは暑く、日かげは涼しい
T:「触って気付いたことをかいていますね。目や鼻で感じたことはないかな。」
・たくさん違いを見つけてワークシートに書くよう声をかけることで、意欲的に活動できるようにする。
*児童全員を外へ引率し、活動場所をその場で確認する。児童が活動してよい場所を分かりやすく指示し(先生が見える範囲には行ってよい、カラーコーンの周りで活動する、など)安全管理ができるようにする。
*活動時間を児童に伝え、限られた時間の中で集中して活動できるようにする。
*教室で振り返るときに使えるよう、日なたと日かげで活動する様子をタブレット端末などで撮影しておく。
・日なたと日かげの違いについて気付いたことを、クラス全体で交流する。
T:「日なたと日かげにはどのような違いがあったか発表しましょう」
C:「日なたの地面は温かくて、日かげは冷たい」
C:「日なたはまぶしくて、日かげは暗い」
・気付いたことを全体で共有する。
*活動の様子を画像で確認しながら発表内容を確認することで、全員の共通体験とする。
*日なたは乾燥した環境を好む動植物、日陰は湿った環境を好む動植物が見つかることがある。水の状態変化や生物と環境の学習につながるので、深入りしない程度に取り上げておきたい。
例)
C:「日かげには苔が生えているけど日なたにはない」
・日なたと日かげの様子が違うのはなぜか考え、問題を見いだす。
T:「日なたと日かげの違いがたくさん見つかりましたね。中でも地面の温かさや明るさの違いは、ほとんどの人が気付いていました。なぜこんなに違うのでしょうか」
C:「日なたは日光が当たるから、明るい」
C:「日なたの地面が温かいのは、日光は地面をだんだん温めているからだと思う」
T:「どれだけ温かいかを調べる道具を、温度計といいます。これは理科の実験でよく使う、棒温度計です。これを使ったら、日光が地面を温めているかどうか確かめられそうですね。日光がだんだん地面を温めているのなら、日なたの地面の温度が上がっていくはずですね。」
T:「温度計の使い方と、地面の温度の測り方を説明するので、次に晴れた日に実験をしましょう」
・日なたは日光が当たるところ、日かげは日光が当たらないところ、とはじめに整理しておくことで、日光がどのような影響を与えているか考えることができるようにする。(その他の要因に注目すると問題がまとまらなくなるため)
*温かさを正確に調べるための道具として温度計を紹介する。放射温度計や棒温度計が扱われることが多いが、ここでは棒温度計を使った場合について記述している。
・棒温度計の使い方と地面の温度のはかり方、実験の準備物を確認する。
【棒温度計の使い方】
・温度計と目を直角にして目盛りを読む。
・液の先が近い方の目盛りを読む。
・ガラスでできているので丁寧に取り扱う。
*棒温度計を大型テレビなどに映し、目盛りを実際に読んで練習しておくとよい。直角に見ないと液の先がずれて見えてしまうところも見せ、正確に測定できるようにしておく。
【地面の温度のはかり方】
・棒温度計を図のようにする。
・棒温度計で土を掘ったり硬いものに当てたりしてはいけない。
【実験の準備物】
・棒温度計1本(器差をそろえたものを選んでおく)、おおい、記録用紙
・実験結果を予想する。
T:「このように実験したら、温度はどんな結果になると思いますか。日なたと日かげではどちらが温度が高くなると思いますか。予想しましょう。」
T:「温度も予想できる人は、何度くらいになりそうか、予想をしてみましょう。」
C:「日なたの地面の温度は上がって、日かげの地面の温度は上がらないと思う」
C:「気温が関係すると思うので、日かげの温度も上がると思う」
C:「今日の最高気温は25℃って天気予報で言っていたから、日なたは25℃くらい。日かげは20℃くらいじゃないかな。」
・実験方法を確認し結果を予想する。
*地面の温度をいつ測定するかは、児童の予想によってかえるとよい。日光との相関性を確かめるだけなら、9時頃(なるべく朝早く)と正午ごろの2回測定すると変化が大きくて分かりやすい。(3回以上測定するのもよいが、気温や雲の影響を受けて日なたの地面の温度が下がり混乱をまねくことがある)
*温度を意識したことがあまりないと考えられるので、児童に身近なものの温度を紹介して予想がしやすいようにする。(体温は36℃くらい、氷は0℃くらい、冷蔵庫は5℃くらい、熱湯は100℃くらい、など)
・本時の学習を振り返る。
T:「振り返りを書きましょう。観察のことや新しく知った実験道具のことでもいいですよ。」
C:「絶対に日なたの温度が高いと思う」「日なたと日かげの違いをたくさん見つけることができた」「棒温度計を壊さないように実験したい」
・予想の根拠や観察して気付いたこと、次回頑張りたいことなど、科学的な視点から振り返ることができるよう声をかける。
作成者からの一言
児童の身の回りの物は安全なものが多いので、ガラス製の棒温度計を使うことを伝えるだけでも緊張感をもたせることができる。ガラス器具や温度の表し方など、初めて扱うときにはもったいぶって児童の意欲が高まるような提示を心がけ、特別感を演出したい。
参考文献
東京書籍, 新編新しい理科3, 2024.
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