小3理科 太陽の光 第2時【反射した日光はどのように進んでいる?~光の通り道を調べて直進性を確かめる~】

キーワード: 日光 反射 光の性質

目次

(一言で)授業の目標

・はね返した日光の進み方をスモークマシンで調べることができる。(実験1) ・はね返した日光が当たった所の明るさや、はね返した日光の進み方についてまとめることができる。

授業の目標(詳細)

児童は前時に、鏡で日光を反射させて遊び、いろいろな気付きや疑問を抱いている。クラス全員の共通体験を土台にして、ここから光の性質を追究しながら光の概念を身に付けていくこととなる。

本時は鏡に反射させた日光の進み方を調べることを通して、光が直進していることを理解する授業である。次時以降は反射した日光でも物を温めることができること、光を集めて(集光して)物の温度を上げることができることを学習する。本時では光の直進性を体験を通して実感的に理解させ、見えない光の道筋をイメージできるようにしておく。光の道筋をイメージできるようにしておくことで、集光の学習にスムーズにつなげていきたい。

本教材のポイント

本時では、日光を反射させて遊んだ経験を生かして、光の進み方についての問題解決を行う。

・導入では反射された日光が壁に当たっている様子を観察し、空気中のどこかを光が進んでいることに気付かせることから問題解決をスタートする。
・光の進み方を予想することで素朴概念を明らかにし、実験を通した再構築を図る。
・スモークマシンで反射した日光の通り道を視覚化することで光の直進性を確かめる。調べたことをもとに光の進み方を矢印で表現できるようにする。

授業デザイン

・教師が反射させた壁の光を見て、鏡とその光の間はどのようになっているか疑問をもつ。

T:「教室の壁にある光は、どこからきましたか。」
C:「日光が、先生が持っている鏡で反射して、壁に当たりました。」
T:「鏡と光の間は、どうなっているのでしょうか。光はどのように進んでいるのでしょうか。」
C:「鏡と光の間に手を出したら、進んでいる光を見つけられそう。調べてみたい。」

【目標】
光はどのように進むのだろうか。

・前時に、反射させた日光が遠くまで届いたことや、鏡の向きを変えて光を操れたことを想起させ、光がどのように進んでいるか調べてみたいという気持ちを高める。

*手などを使えば空気中を進んでいる光の通り道を見つけられそうと気付かせることで、問題解決の見通しをもたせる。

・光の進み方を予想し、実験方法を考える。

T:「鏡がはね返した光は、どのように進んでいると思うか予想をしましょう。矢印や言葉を使って、ノートに自由にかいてみましょう。」

【児童の素朴概念の予想と描画の例】

光は直進しているという考え方(直進説)
光は波のように曲がりながら進むという考え方(なみなみ説)
光は壁に向かうときに上の方(下の方)を通っているという考え方(上に上がる説・下を通る説)

 

T:「いろいろな考えが出ましたが、光の通り道が見えないと調べられませんね。今日は、光の通り道をうかびあがらせる特別な機械を準備しました。この機械は安全なけむりを出してくれます。日光をけむりにあてると、光の通り道が見えるようになります。これを使って反射した日光の進み方を調べましょう。」

・光の進み方のイメージは、児童それぞれが生活経験などを通して構築してきた素朴概念があらわれるところである。自由な表現を認め、子どもなりの考えが表現できるようにする。

*黒板に図をかき、それを真似て予想をさせることで自分の考えを表現しやすくする。

*予想として図(描画)をかかせることで、児童は自分の考えを可視化することができる。友だちの考えと比べて違いに気付いたり、実験結果と自分の予想が一致しているか確かめることもできる。児童にメタ認知を促す意味でも、考えを表すことを大切にしたい。

*直進しているという考え方は「直進説」といったように考え方をネーミングしていくと、目的意識をもった実験をしたり、考察をしたりしやすく、授業も盛り上がる。

*光が上を通るという考えをもつ児童は多い。光を人に当てないように上に当ててきたためだと考えられる。鏡を床(地面)に置いて実験することで、光が直進するイメージを構築させたい。

*教室は机が多く、児童の体が光を調べる邪魔になるので、日光が入りやすい特別教室などの広い空間があれば、そこで授業を行うとよい。

*スモークマシンから出る煙は安全であることを伝え、安心して実験ができるようにする。

【実験方法】
・教室の中をスモークでくもらせて、反射した光の通り道を調べる。

・グループに1枚ずつ鏡を配布し、一人が窓際で直射日光を反射させ、他の児童は光の通り道を観察するよう声をかける。

・グループごとに実験を行う。

T:「一人が鏡で光をはね返して、グループの他の人が日光が進んでいるところを調べましょう。どの説が正しいのでしょうか。」 
C:「直進説。光のまっすぐな道ができている。

・反射した光をはね返す実験をする。

T:「もう一枚鏡を増やしたら、光の道をはね返すことができるでしょうか。(鏡をグループに1枚ずつ追加する。)」
C:「光の向きがかわった。鏡は光の向きを変えることができる。」


T:「そろそろ実験を終わります。窓を全開にして、しっかり十分換気をしましょう。」

・直進性を確かめたら、鏡を増やして反射させた日光をさらに反射させ、鏡で光の向きを変えることができることを体験させる。

*教室が明るすぎて光の通り道が見えない場合、カーテンを半分しめて、暗いところに日光を反射させる。

*スモークマシンはグリコールやグリセリンをベースにした液体を加熱して、蒸気を空気中に拡散させる。空気中を漂うものの、粒子が大きいため光を当てると反射して、光の道筋を浮かび上がらせることができる。なぜそうなるのか、児童から質問があったときには、以下のように学習したことと関連させて説明するとよい。

・煙の小さな粒がたくさん浮かんでいるところに光があたると、煙の粒が明るくなり、光の道のようになる。

・光が途中で弱くなってしまうのは、小さい煙の粒が少しずつ光を遮って、光を弱めてしまうから。


*直進性を確かめるための実験だが、光が煙の中を進むにつれて広がってしまう(光の回折)。これについては「けむりで光がぼやける」という説明にとどめるほうがよい。(直進を確かめる実験が誤概念を生み出す心配があるため)

・結果をクラスで共有し、分かったことをまとめる。

T:「実験の結果、光の進み方はどの考え方に近かったですか?」
C:「直進説」
T:「はね返した鏡から出た後、まっすぐ進んでいることが分かりましたね。」
T:「鏡をふやしたときに、どんなことができましたか。」
C:「光の向きを変えることができた。」
T:「光はまっすぐ進んでいるけれど、それを利用して鏡ではね返して方向をかえれば、いろいろなことに使えそうですね。」

・どの説が実験結果と近かったか問うことで、光の進み方について分かったことをまとめる。

・光は直進するが、鏡によって方向を変えることができることをまとめる。

*光の直進のイメージができあがっている段階なので、児童達は演示実験でも光の道筋をイメージできるようになっている。

・本時の学習を振り返る。

T:「振り返りを書きましょう。分かったことや新たな疑問、分かったことを使うアイデアがあれば、それを書いてもいいですね。」

・本時に分かったことやもっと知りたいことについて振り返りをかかせることにより、次回以降の授業の展開に生かす。

*(参考)漫画「宇宙兄弟」では、主人公が鏡を使って地下の採光システムを考える場面がある。これを紹介して、自分の身の回りで役立てるアイデアを考えるのもおもしろい。

作成者からの一言

光が直進する様子は、前の「太陽とかげ」から矢印で表現してきている。ここでも鏡が反射した光を矢印で教師が繰り返し表現したり、児童の考えを図に表したりしてやることで、矢印での表現に慣れさせたい。描画は理科で必ず使えるようにしておきたい思考ツールである。

参考文献

・東京書籍, 新編新しい理科3, 2024.
・https://www.mocmoc.biz/consulting/7habits-2/(「宇宙兄弟」参考サイト)
・https://visipri.com/event-dictionary/411-SmokeMachine.php#:~:text=%E3%82%B9%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%9E%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%81%AE%E5%9F%BA%E6%9C%AC%E7%9A%84,%E7%9A%84%E3%81%AB%E5%90%91%E4%B8%8A%E3%81%95%E3%81%9B%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82(スモークマシンの仕組み)

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