(一言で)授業の目標
授業の目標(詳細)
児童は前単元の「太陽とかげ」で、かげと太陽の関係や太陽の日中運動について学習してきている。かげに着目して学習を進めてきたが、ここからは日光(太陽の光)について調べていく。
本時は、鏡に反射させた日光で自由試行を行う。単元のはじめにこの活動を行うことで、つかみどころのない「光」に対する児童の経験を増やし、光について調べたり予想をしたりしやすくすることができる。鏡で集光する実験では、思った通りのところに光を反射させないといけないので、その実験の技能も養っておきたい。
本教材のポイント
本時では鏡で日光を反射させ、ねらったところに光を当てたり好きな形の光をつくったりする活動を行う。児童に経験してほしい活動を意図的に仕組むことで、光についての気付きを促したり問題を見いだしたりできるようにする。
・一人1枚の手鏡を用意して、一人一人が自由に光を反射させて遊ぶことができるようにする。光を反射させる経験をたくさんさせ、やってみたいと思ったことを十分試す時間を確保するためである。
・児童に気付きを促したり、児童が問題を見いだしたりしやすくするために、光で遊ぶ場作りを工夫する。光を当てやすい校舎などの壁を選んで活動場所とし、的を貼ったり手鏡に合う大きさの紙を用意して好きな形に切らせたりする。
授業デザイン
・教師が手鏡で日光を反射させた光を見て、気付いたことを発表する。
※次の①②に気付くような気付きを重視したい。
①日光が関係していること
②反射するものは身の回りにあるが、鏡は特に光をよく反射すること
(やり取りの例)
T:「天井を見てください。何か動いています。みなさんもやってみてください。」
C:「光じゃん。できるよ。」
(児童は自分の経験や友だちの真似をして、下敷きや物差しで天井に光をうつす)
C:「先生、できません。立って動いていいですか」
T:「どうして動きたいのですか。」
C:「できる人は下敷きに日光が当たってはね返しています。自分は廊下側の席で日光が当たらないから、日光が当たる窓側に行ってやりたいです。」
(一人にやってみさせ、日光が必要であることを全体で確かめる)
T:「みんなの光よりも、先生の光が明るいのはどうしてでしょうか。」
C;「先生は鏡を使っているから明るいと思う
T:「日光の当たる場所で鏡を動かしたら、みんなも同じようにできるでしょうか。みんなの鏡も用意しましたよ。今日は日光を跳ね返していろいろなことを発見しましょう。
【目標】
鏡で日光をはね返して、気付いたことをまとめよう。
・手品のように、教室のあちこちに反射させた日光を当てることで、児童が仕組みを考えたくなるようにする。
*教師が光を反射させると、興味をもった児童たちが次々と下敷きやものさしを出して光をうつしたがる。強い光は出せないので、この行動を禁止する必要はない。単元へ動機付ける簡単な活動として2~3分やってみさせて、以下の気付きを促したい。
①席について真似をさせることで日光が必要なことに気づかせる。
②鏡をはじめから渡さないことで、鏡が他の物よりもよく光をはね返すことに気付かせる。(鏡を使うことに思考の焦点化を図る。)
*タブレット端末の画面や下敷き、ものさしなどで光を反射させたことがある児童は多い。しかし鏡で反射させた経験がある児童は少ないので、光の強さの違いに気付かせ、鏡でやってみたいという気持ちを高める。
鏡で日光をはね返す活動について説明を聞き、準備をすることで活動の見通しをもつ。
T:「これから外へ出て、日光を跳ね返していろいろ試してみましょう。気をつけることを説明するので必ず守りましょう」
【ルール】
①はね返した光を直接見ると目を痛めるので、自分の顔に当てたり友だちの顔に当てたりしないよう気をつける。
②鏡の表面はガラスでおおわれているので、落としたり硬いものに当てたりして割らないよう気をつける。
③教室に戻ってから気付いたことを発表できるように、一人3つはノートに書いておく。
T:「先生がはね返した光は、鏡とおなじ四角形でしたね。自分の好きな形を切り抜いた紙を貼ったら、その形がうつるでしょうか。紙を配るので、形をくりぬいて外へ持っていきましょう。」
(紙と鏡を安全に気をつけながら配る)
・日光を跳ね返す活動をする時間を十分(20分程度)とるため、説明は簡潔に済ませる。
*一人1枚ずつ鏡がある場合、鏡に番号を記入しておく。自分が何番の鏡を使うか最初に確認させ、自分で責任をもって最後まで管理できるようにしておく。
*教室の窓際で反射させた光をタブレット端末のカメラで見ると、太陽が映っている。端末の画面をテレビに映し、目では見ることのできない鏡の中の太陽を見せてやるとよい。児童は、光を人に当ててはいけない理由を納得することができる。
*活動する場所が遠い場合は、形を切り抜いた紙を教師が作成しておき、活動中に自由に児童が試せるようにしておく。
・活動場所へ移動し、光をはね返す活動を楽しむ。
T:「○時○分まで活動をしましょう。何か気付いたことがあれば、先生が近くにきたときに教えてください。動画をとります。」
T:(見回りながら)「気付いたことを教えて」
【児童の気付きの予想】 |
①の例
C:「星の形の光ができた」
C:「鏡の向きをかえると、光の位置をかえられる」
C:「鏡からななめに光が出るから、的に当てるのが難しい」
C:「光が3階まで届いた」
②の例
C:「友だちの光と合体した。すごく明るくなった。」
③の例
C:「光をおいかけて手を当てたら、ちょっと温かかった」
④の例
C:「全部の的に当てることができた」
C:「光でおにごっこができる」
・児童を見回りながら、どんなことを発見したか児童に聞く。タブレット端末で撮影しておき、教室にもどってから大型テレビで確認できるようにしておく。
*教室にもどったらすぐに鏡を片付けさせ、全て片付けたか確認してから安全確認を行う。
*星やハートの形の光を壁に映した様子
*自由に光を動かし、的に当てたり光を追いかけたりしている様子
・気付いたことをクラスで共有し、問題を見いだす。
T:「たくさんの人が、先生にいろいろなことを教えてくれました。みんなにも知らせたいので、発表してくれる人はいますか?」
C:(展開①の内容を発表する)
T:「光が的にあたっているとき、光はどのように進んだのでしょうか」
C:「鏡に日光が直接あたって、鏡で曲がった」
T:(写真や黒板に図をかきこみながら)「鏡に当たった日光はどこをどのように進んでいるのでしょう。次の時間は、光がどこをどのように進んでいるのか調べたいですね。」
・タブレット端末で撮影した画像や動画も使いながら気付きを共有できるようにする。
*展開①で挙げた児童の気付きの予想①~④を中心に児童の意見を分類する。
*写真に光の道筋を書き込んだり、光の向きを矢印で黒板に表したりすることで、鏡で日光が進む向きを変えることができたと気付かせる。見えない空気中を、光がどのように進んでいったのか考えながら、「日光は壁にあたるまで、どこをどのように進んでいるのか」という次時につながる疑問を抱かせたい。
・本時の学習を振り返る。
T:「振り返りを書きましょう。新しい疑問が出てきた人は、それを書いてもいいですよ。」
・本時に分かったことやもっと知りたいことについて振り返りをかかせることにより、次回以降の授業の展開に生かす。
作成者からの一言
この活動をすることで、児童の意識を光に向けることができる。光は中学校や高校で深く学習することになるが、小学校で扱うのはこの単元だけである。温かさや光の強さを体感しながら学ぶことにより、光エネルギーの基礎的な概念を育てておきたい。
参考文献
東京書籍, 新編新しい理科3, 2024.
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