【和歌を味わう指導の工夫 ~和歌に込められた詠み手の心情と、聞き手にもたらす力を実感する~】高1古文 伊勢物語 筒井筒 第4時

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キーワード: 和歌、歌物語、筒井筒、対比

目次

(一言で)授業の目標

和歌が人々の心情と行動に与える影響を理解できる。

授業の目標(詳細)

本時の範囲では、高安の女が和歌を詠むが、男の心情に変化をもたらすことができずに終わる。なぜ、幼馴染の女の和歌は男の心に響き、高安の女の和歌は男の心に届かなかったのか、二人の女の和歌を対比的に鑑賞する。

和歌は読解が難しく現代語訳に終始してしまいがちだが、古文とりわけ歌物語は、和歌を鑑賞してこそ深みが理解できる。本作品は二人の女の和歌の対比が明確であるため、高校1年生にとって、和歌鑑賞の導入となる。

本教材のポイント

和歌の現代語訳にはあえて時間をかけず、鑑賞に注力できるような発問とグループワークを設定している。また、グループワークでは、二人の女の対比を意識できるように「女の態度」「男の行動」「女の和歌」の3点を各々比較しながら読解できるようなシートを用意している。

「幼馴染の女が奥ゆかしく雅びであるのに対して、高安の女がうちとけて鄙びているゆえに、男は幼馴染の女を選んだ」という要点を理解した上で、「雅び」と「鄙び」が両者の和歌に顕著に見受けられることに気付き、和歌を鑑賞するおもしろさを体感してほしい。

授業デザイン

■前回の内容を確認しつつ、本時の導入を行う。

(1)次の点を確認し、すぐれた和歌は人の心情や行動に変化をもたらすことを再確認する。
①なぜ男は女とは別に高安の女の元に通うようになったか?
②女が読んだ和歌の現代語訳は?
③②の和歌を聞いた男の心情と行動は?
④なぜ③のようなことが起きたか?

T:「妻問婚といって女の家に男が通う結婚形態をとっていたが、男は女とは別に高安の女の元に通うようになった。その理由を二つ答えてください。」
S:「時間の経過に伴う心変わり」と「女の親が亡くなり貧しくなったこと」
T:女が咎めないために、男は女も浮気していると考え留守番の女を覗き見すると、女は和歌を詠んだ。女の和歌を現代語訳してください。
S:風が吹くと沖の白波が立つのたつではないが、竜田山を夜中にあなたは一人で越えているのだろうか
T:女の和歌を聞いた男はどう思ってどう行動したか?
S:この上なく愛おしいと思って、河内へ行かなくなった。
T:なぜ女の和歌は男の心情と行動を変えられたのか?
S:思いが込められているし、技巧がすぐれていたから、など。
※「すぐれた和歌は人の心情や行動に変化をもたらす」ということが再確認できればOK!

(2)本時のねらいの確認
【ねらい】高安の女が詠んだ和歌を観賞し、幼馴染の女の和歌と比較して理解しよう

T:今回は高安の女が和歌を詠むが、それを聞いた男はどのような行動を起こすだろうか。幼馴染の女と比較して読解しよう。

 

 

 

*発問に対し、口頭で答えさせる。

*妻問婚や和歌の修辞(掛詞・序詞)の知識を簡単に復習させる。

 

 

 

 

 

 


*宿題(今回範囲をノートに書き写す)を確認する。

【課題】
高安の女の心情と、男の心情を理解する。

・次の点を確認し、高安の女のうちとけた態度によって男は通わなくなり、和歌を詠んでも状況は変わらなかったことを理解する。
①    高安の女の態度はどのように変化したか?
②    ①に対する男の心情と行動は?
③    高安の女の和歌(2首)の現代語訳は?
④    高安の女の和歌に込められた心情とは?
⑤    高安の女の和歌を受け取った男の行動は?
T:高安の女ははじめと今でどのように態度を変えていったか?
S:はじめは奥ゆかしく振る舞っていたが、今はうちとけた。
根拠:はじめこそ心にくくもつくりけれ、今はうちとけて

T:男は女の変化に対してどう思いどう行動したか?
S:嫌になって通わなくなった。
根拠:心憂がりて、行かずなりにけり。 

T:かの女とは、どの女のことか? 
S:高安の女
T:大和にいるのは誰か?
S:男

T:女の最初の和歌を現代語訳してください。
S:あなたがいるあたりを見続けていよう。生駒山を雲よ隠してくれるな。たとえ雨が降っても 

T:二首目の女の和歌を現代語訳してください。
S:あなたが来ようと言った夜が毎夜過ぎてしまうので、あてにはしないけれども恋しく過ごしている

T:女の二つの和歌は、共通してどのような心情が込められているか?
S:「あなたが恋しい」「会いに来てほしい」など。

T:男は会いに行ったか?
S:行っていない。
根拠:男、住まずなりにけり。 

※高安の女のうちとけた態度によって男は通わなくなり、和歌を詠んでも状況は変わらなかったことを理解したらOK!

 

 

 

 

*辞書で「心にくし」を調べた上で、口頭で答えさせる。
*「手づから飯匙~盛りける」までは教科書の注釈を参照しながら教員が現代語訳する
*「はじめこそ~うちとけて」をメモしておくこと。
*辞書で「心憂し」を調べた上で、口頭で答えさせる。
*「心憂がりて~にけり。」をメモしておくこと。


*男と幼馴染の女が大和=奈良=都会の人物(みやび)であることに触れる
*「な~そ」を調べさせた上で、何人かに口頭で答えさせる。
*前時に配布した地図で大和・高安・生駒山の位置を把握させる。
*辞書で「頼む」を調べた上で、何人かに口頭で答えさせる。


*ペアで討論(3分)→何組かに発表させる。

 

*「男、~にけり。」をメモしておくこと。

【課題】
男が高安の女の元に通わなくなった理由を理解する。

・次の点を確認し、二人の女の対比に気付き、男が高安の女の元に通わなくなった(=幼馴染の女の元に戻った)理由を理解する。
①    二人の女の和歌を受け取った後、各々男はどう行動したか?
②    二人の女の男に対する態度はどのようか?
③    二人の女の和歌に込められた心情の違いとは?
④    男が高安の女の元に通わなくなった(=幼馴染の女の元に戻った)理由とは?

T:幼馴染の女と高安の女、各々の和歌を受けて、男はどのような行動をとったか。本文箇所をワークシートに記載してください。
S:幼馴染→「限りなくかなしと思ひて、河内へも行かずなりにけり」
高安→「からうして、…、「来む。」と言へり」/「住まずなりにけり」

【グループワーク】
なぜ男は高安の女の元に通わなくなったのか。幼馴染の女と高安の女を比較して考える。

ワーク①
T:妻になった後の幼馴染の女と高安の女、各々の男に対する態度が読み取れる箇所を本文から抜き出してワークシートに記載してください。
S:幼馴染→「悪しと思へる気色もなくて、出だしやりければ」
高安→「うちとけて、手づから飯匙とりて、けこの器物に盛りける」

ワーク②
T:二人の女の和歌に詠まれた心情にみられる違いは何か考えて、ワークシートに記載してください。
S:幼馴染の女は男のことを思っているのに対して、高安の女は自分の願望に終始している。
根拠:幼馴染の和歌「~君がひとり超ゆらむ」に対して、高安の和歌「君があたり見つつを居らむ~」「頼まぬものの恋ひつつぞ~」

ワーク③
T:なぜ、男は幼馴染の女の元に戻り、高安の女の元に通わなくなったのか、ワーク①②を踏まえて考えよう。
S:男にとって、幼馴染の女が他者を思いやり上品に振る舞うことが愛しく思えたのに対して、高安の女は品がなく、自分のことばかり考えて嫌気がさしたから。
根拠:幼馴染の女の態度「悪しと思へる気色もなくて、出だしやりければ」和歌「~君がひとり超ゆらむ」は「心にくし(上品)」なもの。且つ大和(都会)の人物。雅び。男は「この上なくかなし」と思っている。
対して、高安の女の態度「手づから飯匙とりて、けこの器物に盛りける」は「うちとけて(品がない)」いる上、和歌「君があたり見つつを居らむ~」「頼まぬものの恋ひつつぞ~」は自分の願望に貪欲。鄙び。男は「心憂し」と思っている。

※二人の女が対比に気付き、男が高安の女の元に通わなくなった(=幼馴染の女の元に戻った)理由が理解出来たらOK!

*ワークシート配布

 

 

 

 

*個人ワーク(2分)→口頭で答えさせる。

 

 

 

 


*グループ討論(3分)→1班に発表させる。

 

 


グループ討論(3分)→1班に発表させる。

 

 


グループ討論(5分)→全班に発表させる。

※机上巡視して適宜ヒントを出す。

*「幼馴染の女:上品(心にくし)な当時の男性の理想像(雅び)⇔高安の女:欲深く俗っぽい(鄙び)」という対比を指摘。

■本時の学習内容のまとめ

・次の点を確認し、歌物語の特徴を振り返る。
①    本文における和歌の役割はどのようなものか?
②    各々の和歌に込められていた心情とは?

T:本文全体で、和歌はどのような役割を果たしていたか?
S:登場人物の心情が込められていた。
T:各々の和歌にはどのような心情が込められていたか?
S:筒井筒~・くらべこし~→結婚の申し入れ、受け入れ
風吹けば~→男の無事を祈る
君があたり~・君来むと~→男が恋しい、会いに来てほしい

T:最も印象に残った和歌とその理由を教えてください。

 

 

*発問に対し口頭で答えさせる。

*復習の質問。口頭で答えさせる。

※和歌に最も登場人物の心情が表れており、物語の展開に不可欠であったこと(歌物語の特徴)を指摘。

*余韻を残す質問

作成者からの一言

太字の発問に集中できるように、時間配分に留意が必要。結婚や恋愛を扱う教材のため、性的多様性に配慮した発言を心掛けること。当時の女性像について言及する際は、ジェンダー平等に配慮し、あくまでも作品世界で描かれている内容であることを強調する。

参考文献

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