
(一言で)授業の目標
授業の目標(詳細)
本時の範囲では、男が高安の女の元へ通い始めるものの、妻の和歌を聞くなり心情を変化させ、妻の元に帰ってくる。歌物語を読解する上で、和歌の力を理解することは不可欠である。本範囲は和歌の力が分かりやすく表現されており、歌物語を読み味わう端緒となる。
和歌の修辞に注意しながら巧みに描かれている妻の心情を読み取る。その上で、男の心情・行動が和歌前後でどのように変化したのかに注目する。生徒が女の和歌に込められた強い力を、実感を伴って理解できることが肝要である。
本教材のポイント
和歌が人間の心情・行動に大きな変化をもたらすほどの力を有しているということは、生徒にとって理解が難しい。そのため、女の和歌が持つ力を生徒自身が実感できるように、グループワークを設定している。地図を用いて、女の立場になって男の足取りを追うことで、難解な和歌読解を楽しんで取り組める。
生徒自身が興味・関心をもって読み込んでいく過程において、和歌の修辞や古語の知識をインプットできるように、問答を重ねている。
授業デザイン
■前回の内容を確認しつつ、本時の導入を行う。
T:幼馴染の男女は大人になってどのような心情の変化が起きたか。
S:恋心が芽生えた。
T:二人は和歌をやり取りしている。このような和歌を何と言うか。
S:相聞歌
T:二人の「本意」とは何か。本文の言葉で答えると。
S:結婚したいという願い。本文箇所は、男の「この女をこそ得め」と女の「この男を」
※幼馴染の男女に「恋心」が芽生え、「相聞歌」を経て、「結婚したいという願い」をかなえたことが再確認できればOK!
T:願いをかなえて結婚した二人だが、今回はどのような出来事が起こるか。女の和歌と、男の行動の変化に注目して読解をすること。
*発問に対し、口頭で答えさせる。
*宿題(今回範囲をノートに書き写す)を確認する。
■課題の検討①
【課題】
男が高安の女の元へ通うようになった理由を理解する。
T:「年ごろ」とはどれくらいの長さをイメージするか。
S:正確な長さは分からないが、年単位など。
T:結婚生活が数年過ぎると何が起こりそうか。
S:目移り、心変わり、など。
T:時の経過だけではなく、二人に起きた環境の変化は何か。根拠となる本文箇所はどこか。
S:女の親が亡くなった。「親なく、たよりなくなるままに」
T:なぜ女の親が亡くなったらたよりなくなるのか。
S:妻の家が夫を養うことが出来なくなったから。
T:「もろともにいふかひなくてあらむやは」に関して、
・「言ふかひなし」の単語を調べる
・(「あらむやは」を説明した上で)まとめてどう訳せるか。
・誰の心情か
S:「一緒にふがいない暮らしをしていられようか、いや、していられない」という男の心情
T:男が高安の女の元へ通うようになった理由は何か。二つ。
S:「時間の経過に伴う心変わり」と「女の親が亡くなり貧しくなったこと」
*発問に対し、口頭で答えさせる(正解を求める問いではなく、生徒のイメージを喚起させる問いのため、自由に発言させる)。
*「年ごろ」の意味を確認する。
*「たより」の意味を確認する。
*発問に対し、ペアで3分程度話し合い、何組かに発表をさせる。
*「妻問婚」を解説する。
*個人で2分程考え、指名して口頭で答えさせる。
*「いふかひなし」の意味を確認する。
*まとめの問い。口頭で答えさせる。
■課題の検討②
【課題】
和歌に込められた妻の心情と、それを聞いた男の変化を読み取る。
T:男の浮気を知った女に関して描写している箇所はどこか
S:「悪しと思ヘる気色もなし」
T:「異心」とはどのような心か。
S:浮気心など
T:男はなぜ前栽の中に隠れたのか。
S:女の浮気を確認するため。
※男が「女が浮気しているから自分を責めないのだ」と思い、隠れて様子をみることにした、という文脈を確認。
*発問に対し、口頭で答えさせる。
*「悪し」「気色」の意味を確認する。
*「前栽」の読みと意味、「いぬ」の意味を確認する。
【女の和歌の鑑賞グループワーク】
ワーク①
T:女の和歌を現代語訳すると。
※「たつ」は(波が)立つと竜(田山)の掛詞である点は補助
※「らむ」は文法書で確認させる。
S:風が吹くと沖の白波が立つのたつではないが、竜田山を夜中にあなたは一人で越えているのだろうか。
ワーク②
T:和歌に込められた女の思いとは。
ステップ1:竜田山はどの様な山であると想像するか。根拠は。
S:(風が吹くと立つ沖の白波のように)危険な山、など
ステップ2:地図を見て、当時の河内までの道程をイメージする。
S:「徒歩で長時間を要する距離である」などの感想
ステップ3:夜中に一人で長い時間をかけて危険な山を超える男を思って詠む和歌にはどのような心情が込められると思うか。
S:夜中に一人で竜田山を越えて高安へ行く男の無事を祈る思い、など
※女が男の身を案じて和歌を詠んでいることを理解する。
T:男は女の歌を聞いて、どのような心情を抱き、どのような行動をとったか。
S:心情は「この上なく愛おしい」行動は「河内へ行かなくなった」
*ワークシート配布
*ワーク①は5分で討論・シート記入。全グループ発表。
*グループ発表後、全グループの良い箇所を抽出して模範解答を作成して板書する。
*訳完成後、改めて掛詞と序詞の解説をする。
*ワーク②は8分で討論・シート記入。ステップ3のみ全グループ発表。
*龍田大社、高安、平城京(大和)及び竜田越えの経由地である亀の瀬をチェックさせる。
*発問に対し、口頭で答えさせる。
*「かなし」の意味を確認する。
■本時の学習内容のまとめ
T:女の和歌はどのような役割を果たしていたか。
S:男の心情と行動を変えた、など。
T:なぜ、女の和歌を聞いて男の心情と行動は変わったのか。S:無事を祈る思い、深い愛情が込められていたから、など。
※上記に加えて、女の和歌の技巧(掛詞や序詞など)がすぐれており、知性が感じられたことも理由に挙げられると補足する。
※すぐれた和歌(思いが込められており、且つ技巧が凝らされている)は聞く人の心情・行動に変化をもたらす力がある点を再確認する。
T:女はなぜ和歌を詠む前に「いとよう化粧じて」いたのか。
*発問に対し、口頭で答えさせる。
*グループで3分話し合い、良い答えが出ていそうなグループを指名。
*答えのない発問。男がいることに気付いていた説、無事を祈るまじないの儀式説、高知の女との違いを際立たせるための描写説などがあることを紹介する。次回の高知の女の和歌へ含みを持たせる。
作成者からの一言
和歌に関するグループワークに時間が割けるように、時間配分に留意が必要。グループ活動の際は机上巡視をする。結婚や恋愛を扱う教材のため、性的多様性に配慮した発言を心掛けること。
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